1985年(昭和60年)12月23日(月)~28日(土) <風間悠真>
……あれからよくよく考えたんだが、クリスマスの認識がまったく現在(令和)と違う。そもそもクリスマスどうする? なんてワードは転生してから聞いたこともない。
去年の12月だってオレはここに存在したんだ。
ただ、クリスマスパーティーなんて家で経験したことないし、友達との間でもそんな会話はない。高校生の時ですらそうだ。高校を卒業して社会人になり、そして上京して20歳になって……。
多分それくらいからだ。クリスマス=彼女と過ごすみたいな雰囲気を肌で感じるようになったのは。でも実際には彼女もできずに1人でコンビニのケーキ、いや、そんなもん買ってない。
いつもと変わらない、東京や横浜(にもいた)の街中がイルミネーションに彩られてクリスマス一色になっていたのを覚えている。
とにかく、認識がないならどうしようもない。
ただ……他の男とは違う都会的な男だと印象づけるために、プレゼントは個別に買った。個別に下校時に渡すことにした。
■月曜日(遠野美咲)
オレは放課後のバンドの練習が終わった後、美咲と待ち合わせて自転車の荷台に美咲を乗せて帰った。いつもの月曜日だ。背中に美咲のおっぱいを感じながらの下校だ。これは全員。
そして、いつも通り帰り道の神社で時間をつぶす。いつも30分程度だ。
12月ともなると、さすがに寒い。なぜか前世では学生服の上からコートを着ている生徒はいなかったが、あれは校則で禁止されていたのだろうか?
今世ではない。
やっぱり部活と同じで慣習だったようだ。くだらない。寒いのでオレは普通に手袋をはめ、ショートだけのアウターを羽織っている。マフラーも。オーソドックスなチェック柄だ。
誰も着ていないから目立つ。そしてファッションリーダーではないし自覚もないが、ちょっとだけ流行には気を配っていたのだ。
「寒いね」
神社のベンチに2人で座った後、美咲はそう言ってオレに体を寄せてきた。
「悠真、あったかい……♡」
いつもの強気な美咲からは想像できない、甘えた声。バレー部の次期エースとして注目されているけれど、こういうときは素直に甘えてくる。
「ほら」
オレはマフラーを外すと、美咲の首に巻いてやった。突然の優しさに、美咲の頬が赤く染まる。
「でも、悠真が……」
「オレはアウターを羽織ってるから大丈夫。それより」
ポケットから小さな包みを取り出した。
キスミーのコスメセット。美咲は誕生日にプレゼントしたリップを大事に使ってくれている。同じ色だが、この時代、女子中高生にとってはちょっとした憧れの品だ。
「クリスマスプレゼント」
「え? プレゼント?」
美咲の目が丸くなる。いつもの強気の美咲じゃない。ツンデレもいいけどね。
「私……もらっていいの?」
「うん。クリスマスは特別な人にプレゼントをするイベントの日なんだよ。本当は2人っきりでデートしたり夜を過ごしたりするんだけど、ちょっとオレ達じゃまだ、ね」
包みを開けた瞬間、美咲の目が輝いた。
「キスミーの……セット?」
声が上ずっている。普段は強気な美咲が、まるで別人のように顔を赤らめた。
「誕生日のリップ、いつも使ってくれてるから」
「うん……毎日」
美咲は大切そうに箱を両手で包み込んだ。
令和ならすぐにスマホで写真を撮ってSNSにアップしただろう。でも、この時代の女子中学生は違う。ただ黙って、大切なものを心に刻み込むように見つめている。
「で、でも……その、クリスマスって特別な人にプレゼントする日なんだよね?」
美咲の声が少し震えている。さっきの説明の『特別な人』という言葉が引っかかったらしい。オレとしては美咲も凪咲も純美も礼子も菜々子も恵美も、特別な存在だ。
でもやっぱり初恋の女、美咲はちょっとだけ、違うのかな。
「そうだよ」
「じゃあ、私は……悠真にとって……」
言葉が途切れる。頬を染めた美咲の横顔が、夕暮れの光に照らされて綺麗だ。
この時代のクリスマスは、まだそれほど恋愛色の強いイベントじゃない。だからこそ、オレの言葉と行動が、余計に美咲の心を揺さぶったのかもしれない。
「ねぇ、悠真……」
美咲が顔を上げる。普段の強気な態度は影を潜め、どこかはかなげな表情を浮かべている。
「私ね、悠真のこと……」
その瞬間、オレは美咲の肩を抱いて顔を寄せ、キスをした。
美咲は驚いたようだが、キスは初めてじゃない。今まで何度もしている。でも、クリスマスのこのシチュエーションでのキスは、初めてだ。
その先の言葉はもう知っている。夏休みの花火大会の神社の階段で、二人で隣に座ってキスをしたときに聞いたのだ。
オレはそのまま舌を入れた。
ビクッと美咲の体が震えたが、オレがしばらく口の中で舌をモゾモゾさせると、オレの舌に自分の舌を絡めてきた。そのまま2人でしばらくキスをする。
オレは右手で美咲の胸をもみ、シャツのボタンを外してさらにブラジャーの上からもむ。十分にその膨らみと柔らかさを感じた後に、今度はブラジャーの下から潜り込ませるように手を入れた。
「あ……」
美咲が小さな吐息を漏らす。オレはそれを合図に、手をブラの下にもぐりこませて、直接乳首をなぶった。さすがに少しだけ驚いたらしいが、ゆっくりやさしく触れているうちに、なすがままだ。
キスをしては唇を離し、それを繰り返してオレはスカートの中に手を入れて太ももをさすった。
「あ……悠真、だめぇ……」
美咲が切なげな声を上げる。オレはそのままゆっくりと太ももの付け根まで手をはわせて、パンティに触れた。
ビクンっと震える美咲の体の振動がオレに伝わる。
「……っ!」
声にならない声を上げながら、美咲の体が震える。でも抵抗はしない。
「悠真ぁ……私……」
潤んだ瞳でオレを見つめる美咲に、もう一度キスをした。今度は舌を入れずに、軽く唇だけを合わせるキスだ。
その先は、オレはしなかった。まだその段階じゃない。ゆっくり、ゆっくりだ。
オレはクールダウンするようにゆっくりと美咲のパンティから手を離すと、両手で美咲の体を抱きしめた。
何度も、何度もキスをした。
お互いを感じあうかのように。
それからオレは、火曜日から土曜日まで他の5人とも同じように過ごした。
え? どうなったかって?
まあ同じくらいだね。凪咲とはこの前スカートの中に頭を入れたし、他の2人は美咲と同じように手で触れた。菜々子と恵美はまだまだ先の話。でも手は握ったよ。
みんなそれぞれの反応だったけど、全員かわいい。
ちなみにプレゼントは当たり前だけど全員違うものを贈った。
凪咲にはシルバーのブレスレット(1,500円)で、純美にはガラスの小物入れ(1,600円)。礼子には小さなペンダント(1,700円)を贈って、菜々子にはヘアアクセサリー(1,500円)と恵美には手帳セット(1,600円)。
全員店員さんオススメだったけど、選ぶの大変だった。
ともあれ、このプレゼント作戦はもれなく好感度アップに貢献したのである。
次回 第46話 (仮)『初詣』
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