第63話 死闘!葛ノ峠の戦い①

 永禄六年二月 小佐々城 小佐々純勝

「申し上げます! 宮村城の大村純種様、ご謀反にございます!」

「なに?」

 おそらく、単独ではない。背後に後藤か松浦が控えているのであろう。

 いずれにしてもこちらも出なければ、南風崎はえのさきの砦があぶない。

 やはり、恐れていた事が起きてしまったか。勝敗は兵家の常とは言え、あの敗戦の影響がこうも早くでてくるとは。

 こたびの戦、長引けば長引くほどこちらが不利になる。

 南風崎は大村湾側のわが領地、飛び地ではあるが、早岐瀬戸の海運を担っている重き足溜あしだまり(重要拠点)だ。

「大村様はすでに進発にて葛の峠を越えております。先手が城に攻撃を加えておりますが抵抗強く、到着後包囲、総攻撃のご予定にございます」

「ではただちに兵をあつめ、大串の湊より船にて葛の湊を目指す。武雄と平戸の援軍がくるまでに攻め落とさねばならぬ。急げよ!」

「はは!」

 くそ、こんな事になるなら、内海の軍船をもっと増やしておくべきだった。一度にたいして運べぬではないか。

 

 ■同刻 沢森城 沢森政忠

「何? 謀反だと?」

「は、宮村城にて籠城中の純種様を民部大輔様は包囲し、攻撃を開始しております!」

(まずい、このままだと袋の鼠になるぞ)

「誰か! 治郎兵衛に、隊をわけ、一隊を大串の湊へ急行させよと伝えよ。残りは横瀬の守りを固め、領民と南蛮人を石原岳堡塁へ退去させよ、とな。必ずこの機に伊賀守はくるぞ!」

「全艦出港準備! 沢村艦隊の初陣になるぞ!」

(嫌な予感がする。間に合えばいいが)

 

 ■深作治郎兵衛兼続

「なに?! よしわかった! 第一連隊は指示に従い大串の港へ向かい、乗船して葛の港へ向かえ。第二連隊は堡塁の防御を固めつつ避難民を誘導せよ。第三連隊は横瀬を取り囲むように陣を構え、一兵たりとも上陸を許すな!」

 はは! と伝令が走り去る。

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