家督

緊迫の極東と、より東へ

第494話 ヌルハチと越後の龍 上杉不識庵謙信という男

とは言ったものの、超大国・明なんだよな。  放置したとして、万が一の事が起こりえない、とも断言できないところが苦しいところだ。永楽帝の死後の洪熙帝と宣徳帝の時代に、明の国力は充実した。  その後、安定と衰退とを繰り返し、先代皇帝の嘉靖帝の代...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第485話 武田勝頼の両目、真田昌幸と曽根虎盛

遡って元亀二年 九月十二日 甲斐 躑躅ヶ崎館 「誠に! 誠に御屋形様は、生きておられるのですか?」  勝頼は武田の重臣である馬場美濃守信房に訊いた。 「誠だ」 「では何故、それがしには身罷られたなどど、嘘をおっしゃったのですか」 「お主、御...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第482話 甲斐武田家、ハードランディング?

元亀二年 十月五日 京都 大使館  先日の純久の申し出どおりに関白二条晴良邸に伺うことになり、三人は午前中から手土産を選んでいた。 「関白様は甘味がお好きなので、いくつか中ノ屋の茶菓子店より持ってこさせました。一人一つずつ、進呈なさればよろ...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第478話 純正の決断、織田信長か武田勝頼か

元亀二年 九月二十五日 諫早城  発 治部 宛 中将  秘メ 武田家 家臣 曽根九郎ト 申ス者 来タリテ ワレラト 誼ヲ 通ジテハ     盛ンニ 商イヲ 行ヒタシ ト 申シケリ  然レドモ ワレラト 織田ニ 盟約アリテ ソノ敵 武田ト 結...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第477話 曽根九郎左衛門尉虎盛、小佐々治部少丞純久と相対す。

元亀二年 九月二十一日 京都 在京小佐々大使館 「大使、曽根九郎とおっしゃる方がお見えになっています。お通ししますか?」  曽根、九郎? 左衛門尉? 誰だ? そう純久は思った。思い当たる節がない。 「わかった。通しなさい。ああ、飲み物も用意...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第476話 甲斐武田家第十七代当主、諏訪四郎勝頼改め武田勝頼

元亀二年 九月十日 躑躅ヶ崎館 (さて、どうするか……)  勝頼は、夜も更けた躑躅ヶ崎館の居室にて、二人の家臣を前に考えている。  信玄の死後家督をついだものの、あくまで名代。  対外的には信玄は隠居して勝頼が家督を相続、そして息子の信勝が...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第475話 義昭、流浪将軍となる

元亀二年 九月二日 京都 室町御所  信長が義昭に提示した条件は二つであった。  人質を出す事と、異見十七箇条を認める事である。義昭にとってはどちらも認められるものではなかったが、交渉の余地はない。  なにせ和睦という体の降伏なのである。 ...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第470話 虚々実々、信長と純正と信玄と

元亀二年 八月十日 三河 「申し上げます!」  武田軍の撤退の報を受け、逃散していた兵をまとめていた信長のもとに急報が入った。 「何事か!」  信長に急を報せるのは、織田家の忍者集団『饗談きょうだん』の頭領である、岩村長門守重休しげやす(2...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第456話 不完全な信長包囲網

元亀二年 四月二十五日 因幡 鹿野城  発 純久 宛 近衛中将  秘メ 二俣城 危うし 天方城ヲハジメ 北遠江ノ 諸城 コトゴトク 落チリケリ サラニ 北条ノ 援軍アリテ 徳川 後詰メ ナラズ 一言坂ニテ 敗レリ 秘メ  三河の北東部と遠江...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第445話 元亀二年と遠洋航海、バンテン王国より東へ。

元亀二年 元旦 諫早城  元旦の年賀の挨拶には、年々増加の一途をたどる来賓の数に対応するため建てられた、巨大な迎賓館が使用された。100人や200人ではない。  純正はまず、午前中を空け、家族や親族との対面に時間を割いた。父親はいつまでたっ...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第443話 通訳を求めて堺へ。紙屋甚六の旅

元亀元年 十二月二十三日 大和国(奈良県) 「やはり遠いですな、大和は。ここからさらに京に堺にとなると、さらに遠い。そしてこのたびのお役目は、難儀な事ですなあ」  そうやって同行者に愚痴をこぼす者がいる。  相模国小田原の紙商人の紙屋甚六で...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第435話 尼子家の苦悩と復興

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城 酉三つ刻(1800)  ■別所家中 「叔父上、やはり中将様はひとかどの人物ですね。くぐってきた修羅場もそうであるし、話も飽きぬ。なにより、戦を好まぬ姿は好きです」  別所長治は叔父で一門、家老の別所重...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第434話 中将殿と西国の群雄

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城 酉三つ刻(1800)  50人ほど入る規模の会場には、大名家・国人家ごとに席が設けられていた。  上座には横長に3つの机が並べられている。真ん中のひときわ大きい机には純正が座り、宗麟、通宣、存保が右手...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第433話 変革の時

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城  元親は純正の発言の意図が理解できない。 「それは一体、どう言うことなのでしょうか?」 「言葉通りの意味である。宇喜多殿とは使者を通じて、服属したいとの旨を承っており、了承したのだ。その際、この毛利家...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第432話 負の連鎖を断つとき

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城  宇喜多家と宇喜多直家をどうしたいのか?   純正の問いに三村元親は即答できない。父を殺した憎き敵が目の前にいるのだ。どんな形でも良いから仇を討ちたいはずなのに、なぜか答えられない。 「それは……」 ...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第430話 力と政治

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城    戦国時代初、関係各国の代表、いわゆる首脳が集まる会談が伊予の湯殿城で開催された。甲相駿三国同盟でも3人である。10人はまずないだろう。  どこで開催するか迷った純正であったが、諫早城はさすがに遠...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第427話 純正上洛ス 将軍義昭二問フ

元亀元年 十一月一日 京都 室町御所  発 純久 宛 近衛中将  秘メ 公方様ヘ 宇喜多ノ 使者 謁見セリ 御教書ヲ 当家 ナラビニ 毛利 山陽 山陰 各大名ニ 送ルトノ 風聞アリ 内容ハ 播磨、美作、備前ノ 輩ハ 毛利ノ家人 タルベシ ト...
新たなる戦乱の幕開け

第420話 毛利輝元と安国寺恵瓊、相対するは戸川平右衛門尉秀安なり

元亀元年 十月七日 吉田郡山城 「殿、宇喜多家臣、戸川秀安と申す者がお目通りを願っております」  毛利家当主である毛利輝元は、外交僧で顧問の安国寺恵瓊と談笑していた。  このとき両川である小早川隆景は領国である新高山城(にいたかやまじょう)...
新たなる戦乱の幕開け

第384話 来島通総兄弟と瀬戸内の緊張

永禄十二年 十二月 五日 来島城 「兄上、もう半年になりますね」 「そうだな、もう半年になる」  伊予来島の村上(来島)通総は九歳である。  二年前に父である村上通康が死に、元服して家督をついだ。兄がいたのだが、母親が主君筋の河野弾正少弼通...
西国の動乱、まだ止まぬ

第375話 かかった火の粉がいつの間にか四百万石

永禄十二年 十一月十六日 諫早城  純正は各方面から届けられる書状や通信文書を読みながら、定例会議を開いて今後の対策を考えていた。  空閑三河守、藤原千方(親)、鍋島直茂、尾和谷弥三郎、佐志方庄兵衛の五人が傍らにいる。そして閣僚の面々。 「...
西国の動乱、まだ止まぬ

第368話 仕組まれた反乱、南九州にて

永禄十二年十一月二十日 諫早城 会議室  小佐々純正は政務の合間を縫って、子どもたちと遊んでいた。  子供だと思っていた弟の千寿丸は元服し、結婚して海軍兵学校へ入学している。甥っ子の幸若丸でさえ十一である。そろそろ元服を考えなくてはいけない...
西国の動乱、まだ止まぬ

第366話 観音寺騒動ならぬ三雲騒動

永禄十二年 十一月十日 南近江 三雲城  織田信長の圧倒的な軍事力の前に、昨年の永禄十一年、六角氏の主城である観音寺城が落とされた。  実際には支城である箕作城がわずか一日で落とされ、次いで和田山城の城兵の離散にともない、守れぬと判断しての...
西国の動乱、まだ止まぬ

第363話 元第二分隊航海科の純正、六分儀の製作に携わる?

永禄十二年 十一月 諫早城天守 天文台  寒い、しかし冷えて眠気覚ましにはちょうどいい。  九十郎秋政が観測をしていた。諫早城天守に設けられた観測用天文台だ。天守からも渡れる構造になっているが、天文台側からは天守には入れない。  純正の足音...
肥薩戦争と四国戦役

第347話 九州平定セン、然レドモ先ハ尚長シ……。②

十月十九日 午三つ刻(1200) 日向国紫波洲崎村(宮崎市折生迫)   な! 祐青すけきよが目を見開き純正を注視した。 「めっそうもございませぬ! 誰がそのような事を。許せませぬ」。  純正は落ち着いて祐青を制止した。   「修理亮よ、余は...
肥薩戦争と四国戦役

第346話 九州平定セン、然レドモ先ハ尚長シ……。

十月十九日 巳二つ刻(0930) 日向国紫波洲崎村(宮崎市折生迫)   三人が全員そろうまで、四日かかった。伊東祐青は自領内での開催もあって、通達が届くのは一番遅かったが、十六日に紫波洲崎城へ挨拶にきていた。  純正は城内に案内され城で過ご...
北九州を二分する 二つの二虎競食の計

第168話 宗麟の逆鱗。筑後戦役か?

永禄十一年 正月 臼杵城 大友宗麟  例年のごとく年賀の饗宴を催していたのだが、異変に気づいた。  毎年正月には九州各地から大名たちがわが城を訪れ、年賀のあいさつをしてきた。  従属している大名はもちろん、日向や肥後からもやってきていたのだ...
北九州を二分する 二つの二虎競食の計

第154話 筑前仕置 驚愕の元就と宗麟

永禄十年 十月 小佐々弾正大弼純正  結局、立花鑑載と高橋鑑種、秋月種実は本領安堵の国人衆の二を選び、宗像氏貞と原田隆種は四を選んだ。  立花鑑載が糟屋郡と広田郡と嘉麻郡の三郡、鞍手郡の四十五ヶ村で十五万五千石。  高橋鑑種は那珂郡と御笠郡...
肥前争乱、淘汰するものされるもの

第95話 北がダメなら南にすすめ 俵石城攻略戦

十一月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正 「さて、どうする?」  俺は深沢義太夫、深作治郎兵衛、藤原千方、沢森利三郎の四人と、特別参謀として佐志方杢兵衛を加えた五人で、戦略会議を行っていた。 「外務大臣、どうだ、外交状況が悪いところはあるか?」...
5強まであと7,000石(現在36,824石)

第88話 宇久純定という男

永禄七年 二月 五島江川城 宇久純定  五島は宇久純定(39)が統治していた。親平戸松浦勢力である。  いや、だったが正解だ。  純定の祖父が家臣の謀反で死に、父が逃亡先の平戸で育って、隆信の父興信の代に援助を受けて取り返したのだ。  しか...
5強まであと7,000石(現在36,824石)

第83話 宮の村返せだって? あんたバカぁ?↑ 

永禄六年(1563) 七月 大村館 小佐々弾正 「おお! よくぞ来た平九郎! 小佐々の家督をついだそうだな」  俺が来たのが嬉しいのか、それともなにか魂胆があるのかわからない。主殿に案内された俺は、喜々とした純忠の態度に驚いた。  日の出の...
横瀬浦開港 敵が味方 味方が敵に

第78話 母、沢森 吉野と妻、沢森 舞

沢森城 沢森政忠  結局、平戸松浦は平戸島内の川内村、大野村、平戸村、小引村、田浦村の三千七百八十石を割譲した。  松浦郡の海岸、街道沿いの二十四ヶ村の豪族たちも、あわせて一万一千五百八石。佐世保と同じやり方なので、ほぼ直轄地。  沢森は二...
横瀬浦開港 敵が味方 味方が敵に

第75話 松浦へのネーバルプレゼンス 

俺の中で二人の処遇はもうすでに決まっていた。  隆信は切腹で、鎮信は出家。そしてどこかに幽閉する。  そしてこれは、かなり母上に泣きつかれて、情にほだされそうになったが、心を鬼にしてお願いした。  千寿丸を養子に出す。完全に平戸松浦を支配下...
二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート

第42話 永禄四年末評定 十年戦略策定と短期目標

永禄四年十二月 沢森城 沢森政忠  年末を迎えるにあたって、家臣を一堂に集めて評定を行った。今後は定期的に行おう。  当主 沢森政忠  親族衆  筆頭 沢森政種(父)  親族衆 外交方 沢森政直(次男・政忠の叔父)  親族衆 殖産・技術方 ...
二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート

第32話 上松浦党の波多親

永禄四年(1561年) 六月 沢森城 「して、どうであった?」  俺は利三郎の報告を受けた。ひと月ほど前から粘土の調達と外交をまかせていた件だ。 「は、内海、福田とも感触は良好でござった」  利三郎は上機嫌だ。良い内容なのだろう。 「両家と...
二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート

第29話 利三郎と忠右衛門

永禄四年(1561年) 五月 岳の城 沢森利三郎政直  どたどたどたどたどた!    忠右衛門と二人で主殿に向かう。なんでまた、いきなりなんだ? 「殿!」 「殿!」  主殿の下座には先日家督を相続したばかりのわが殿、平九郎様がいらっしゃった...
二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート

第26話 転生人から674石の領主へ

家督をついだ。実感は、あまりない。儀式は滞りなく終わった。小佐々の殿様にも家督相続の報告に行ったが、喜んでくれた。親父が存命中だから、てっきり相続前に反対するかと思っていた。  ……親父め、裏から手をまわしやがったな。  親父とはあれから、...
歴史改変仕方ない。やること多すぎです。

第25話 26年ぶりの父との邂逅

「幸い挫滅している部分も少なく、壊疽えその心配はありません。ただ、毒素が血を巡って五臓六腑ごぞうろっぷを侵しております。持ち直したとしても、後は運を天に任せるしかありませぬ」  親父は一時は回復した。  起き上がれもしたが、また寝たきりにな...
方言全訳バージョン

【標準語全訳】第299話 工部省における、石炭からコークスへ「ビーハイブ炉」の研究開発

※本文の標準語訳です。  対馬の宗義調の尽力もあり、朝鮮半島からの技術者の招聘に成功してはや一年半。波佐見、有田、伊万里、三川内、唐津など肥前の各地で陶磁器の製造が始まっている。  原料となる陶石は南肥後の天草で多量に産出するし、肥前各地で...
人物紹介

人物紹介⑤(273話~347話)

種子島時尭(33)※273話 種子島氏第14代島主。日本に最初に銃を導入し、国産化に導いた。小佐々家の南方戦略にともない、冷え切っていた島津家と関係を清算するため、同盟を結ぶ。 仲屋乾通(51)※ 戦国期の豊後の豪商。通称は次郎左衛門。享禄...
人物紹介

人物紹介④(127話~272話)

( )内は転生時、永禄4年(1561年)時点での数え年齢です。基本的に架空・史実の両方記載しますが、史実の人物の生没年、内容、記載の有無は筆者の任意なのでご了承ください。※は史実人物(本作ストーリー上内容修正あり) 龍造寺政家(5)※純家/...
人物紹介

人物紹介③(51話~126話)

( )内は転生時、永禄4年(1561年)時点での数え年齢です。基本的に架空・史実の両方記載しますが、史実の人物の生没年、内容、記載の有無は筆者の任意なのでご了承ください。※は史実人物(本作ストーリー上内容修正あり) 橘屋又三郎(38)※ 堺...
人物紹介

人物紹介②(12話~50話)

( )内は転生時、永禄4年(1561年)時点での数え年齢です。基本的に架空・史実の両方記載しますが、史実の人物の生没年、内容、記載の有無は筆者の任意なのでご了承ください。※は史実人物(本作ストーリー上内容修正あり) 沢森吉野(32) 沢森平...