第52話 脅威の、驚異の、二万四千貫文。

 堺から鉄砲鍛冶職人と、薩摩から造船職人を招致して、軍船、鉄砲、大砲の国産化を試みている。鉄砲は有馬より早く、そして有馬の追随を許さない様な品質と、生産量を築きあげよう。

 その視察も含めて、今日は忠右衛門管轄下の技術街に来ている。面高郷全域だ。研究・生産区分ごとに分かれていて、産業部門と軍事部門に分かれている。

 産業部門は第一次産業、第二次産業と分かれているのだが、軍事部門は兵器部門、造船部門、開発部門に分かれている。

「忠右衛門、苦労をかける」

「めっそうもありません。(あの鼻ったれだった)若様がご立派になられて、若様、いえ、殿の為、沢森のために御役に立てるなら本望でございます」

 ふふ、そう言ってくれると気が楽だよ。

「ありがとう。目立った問題もなく、順調にすすんでいるようだな」

「はい、なにぶん大量の材料が要り申す。そこが難儀な所ではありますが、仕組みに工夫をこらすところは、少しずつですが解消されつつあります。まずは造船ですが……」

 堺の鉄砲鍛冶橘屋又三郎と薩摩の船大工、樗木(おうてき)三郎右衛門を紹介しつつ、順に見て回る。

「いま、小さき実物に倣う型を造りつつありまする。何ら障ることなければ、大工八百人、鍛冶六百人、雑役三千人を使いて、おおよそ二月ほどで出来上がりまする。殿がお持ちになった絵図面は、大いに役立ちておりまする」

 石宗衆をつくってから、平戸に密かに忍ばせていたのだ。

 ポルトガル語で書かれているので、何がなんだかさっぱりだった。

 しかし船大工の長年の経験というのはすごい。ここにきて、同じではないが実物を間近に見て絵図面と照らし合わせたのだろう。

 百二十文(大工)×八百人×六十日=五千七百六十貫
 七十文(鍛冶)×六百人×六十日=二千五百二十貫
 四十文(雑役)×三千人人×六十日=七千二百貫

「こちらは職人の賃金になりますので、多めに見積もっておりまする。然れども、もう少し値切る事もできます」

「よい。決して値切るでないぞ。十分な賃金、十分な待遇で働けるからこそ、期待以上のものが得られるのだ。人の意欲というものを馬鹿にしてはならぬ」。

「は、申し訳ありません。それでは木材ですが、流石に領内ではまかないきれず、もっとも近場で筑後の大川より買い付ける事になるかと存じます」

 忠右衛門は続ける。

「しめて四万九千二百貫ほどの木材が必要です。銭で二千貫文程度になり申す」。

 うむ、と返事をする。

「次に大砲でございますが、現在鋳造と鍛鉄の両方で進めており申す。両者とも一長一短にて、値では青銅、鋳造に分があり、質では鍛鉄です。値が鋳造で一門二百両、同じ大きさで鍛鉄は千両以上かかります」

「おおよそですが……しめて鋳造でフランキ砲の場合、二万四千貫前後となりましょう」

 そうか……、ん? なんて? に、まん、よ、んせんかん……て。?

 やべ、頭痛くなってきた。ゲキゲキ激高やん。

 とりあえず捕鯨を一組から三組に増やそう。確か一企業で合計3,000人いたんだからいいだろ。

 それから、塩田を三倍にしよう。二十反分は採掘を始めた石炭で賄って、薪との利用割合は市場価格を安定させる点で変動させよう。

 軍事費はんぱない(T_T)

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