第61話 月二千貫と、その都度必要経費。そしてやっとできた。

 永禄五年 十二月 沢森城

 七月に技術部に指示書として出していた、フリントロック式のマスケット銃が完成した。

 毎月二千貫、必要経費で出していた甲斐はある。もちろん二千貫の技術部経費はこれだけのためではないのだが、なるべく急いで、と伝えていたのは事実だ。

 火縄式ではないので管理せずにすむし、火花も小さいのでより密集して運用する事が可能だ。

 燧石(すいせき・火打ち石みたいなもの)を擦る事で火薬に着火するしくみなので、若干だが火縄より動作時間が短くてすむし、安価だ。

 以前タバコを吸っていたのを思い出し、ジッポのライターが、(あれ、確か火打ち石みたいなもんだよな……)という発想である。火打ち石自体はこの時代にもあるだろう。

 数回の発射ごとに、摩耗して着火しにくい点がデメリットとして挙げられるが、それでも運用面のメリットを考えれば導入したほうがいい。

 まずは第一連隊から配備していこう。

 しかし毎回、俺のうろ覚えをよく形にしてくれる。ほんとありがたい。望遠鏡だってそうだし、大砲もそうだ。この短い間によくやってくれている。

 あとはペニシリンと雷管と、それからヘロンの蒸気機関の応用で実用化。ガラス細工と注射器と温度計と湿度計……。

 ライフリングと後装式と。あと反射炉? と石炭から……コークス? これは幕末?

 いやいやいや。ムリムリムリ。でも発明は苦労の母? なんだっけ。

 あれがあったな、これがあったな。それを考えると数限りない。水洗トイレにウォシュレット。暖房に。電信電話に無線に。飛行船に飛行機に。

 実現不可能だけど、それを言っちゃ人類の進歩はなかったわけで。皆さんに頑張ってもらいましょう。

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