第371話 帝への上奏、肉食文化への願いに儲け話と省庁部分改編

西国の動乱、まだ止まぬ

 永禄十二年 十一月 諫早城

 純正は戦に明け暮れ、というよりも南九州と四国、そして南方と広がり続ける戦線でも生活を豊かにする事を忘れない。

 領民の食生活を豊かにすることが、国力アップにつながるとも考えた。

 それから飲食店ビジネスの利益の部分もある。もしかしたらそれが先なのかもしれない。

 

 主上御前

 小佐々弾正大弼純正拝請文

 拝啓、時下ますますの主上のご隆盛を心よりお祈り申し上げ候。至下、ある所存を伺わせて頂戴すべく、一筆奉ずる次第に存じ候。

 このたび肉食に関する勅許を請いたく、謹んで申し上げたく存じ候。

 かねてより、肉食は仏法に背くとの風評あり候えども、下記に存じる私といたしましては、その考えを否定するものにあらず。しかるに、肉食には民の生活や健康において諸多の利益ありと存じ候。

 一に、肉の賜物は庶民の体を鍛えんと存じ。肉の質は良しとして、疾患や食糧の不足にも立ち向かわんと存じ候。肉の味、上々として、庶民の心を慰むるものと候。

 庶民が健やかに過ごせば、我が国は安泰となり、主上の威厳もまた増すべく候。

 二に、肉は武士の武勇を養ふ。肉により、身の健やかさを増さんと存じ。肉はまた、心の勇を盛り上げ、気魄を増せんものと考え候。この乱世におきましては、常に他国との合戦は避けがたし。

 肉を食することにより、足軽や武士たちの力も増し、敵を恐れぬ心で戦場に立つことができんと存じ候。

 三に、肉の食べ物は異国との交易の契機とならん。異国においては肉を食する風習があり、異国の者たちとの交際には欠かせぬものと存じ候。

 また、肉の食べ物は貴重なるものとされ、贈答品としても適していると存じ候。肉を食することにより、異国の人々との友情を結び、主上の御名声は遥か遠方にも響き渡らんことを願いたく存じ候。

 以上の理由から、至下は肉食の勅許を請うて候。ただし、仏法を尊重するためにも、以下の条件を守ることを誓うて候。

 一に、肉を食することは日々行わんとも、その際には必ず念仏を唱えんことを定む。念仏を唱えれば、命を捧げたる生き物の罪縁が断たれんと伝えられたり。また、念仏を唱えんことにより、己の罪縁もまた断たれんと存じ候。

 二に、肉としていただく生き物とは、牛・豚・鶏・羊・鹿・猪・兎・鴨・雁などと定む。これらの生き物は、人の心に似たる情や知恵を持ち難しと伝えられたり。

 また、畜飼や狩の技により、これらの生き物は易く手に入るものと存じ候。

 三に、肉をいただくに際し、命のありがたさを常に口にせんこととなす。命のありがたさを口にすれば、命を捧げたる生き物への感謝の情が湧き上がると伝えられたり。

 また、命のありがたさを唱えれば、己も生きる勇気を得られんと信じ候。

 四に、肉をいただく際は、三種の清き肉とせんことを奉る。

 三種の清き肉とは、命を絶たれる場を見ぬもの、己がために命を絶たせたと聞かぬもの、己がために命を絶たせたと知らぬもの、この三つの条件を兼ね備えたる肉を申すものに候。

 初期仏教の尊僧らは、三種の清き肉とせんことを奉じることが許されたるものと聞こえたり。

 また、末法の思想を有する浄土宗や浄土真宗などの教えでは、肉食の禁忌はなく、これは念仏の力により、罪障が清められんとの信仰よりであると存じ候。

 以上の条件を守りつつ、肉食の勅許を請うて候。主君の御心次第にて候えども、至下の願いを聞き入れていただければ、感謝の念に堪えないと存じ候。

 敬具

 

 ざっくりと超訳する。

『肉食の公式許可を求めます。肉は健康向上、武士の体力増強、外国との交流を促進します。ただし、仏教の教えを尊重する条件として、念仏を唱え、特定の動物の肉のみを食べ、命の尊さを感じ取ることを提案します。この条件の下で、肉食の許可を検討していただきたいと思います』

 という事だ。キリシタンに関しては。おいおい許可をもらうようになるだろう。まずは大多数の人に肉食教を布教する。

 小佐々領内は必ずやさらに豊かになるはずである。

 ちなみに波多領は、まじめに賠償金を払っているし、小佐々の歳入の1%にも満たない金額なのですでに純正は撤廃していた。

 かなりの負担減となり、波多領の発展に寄与するだろう。

 平和になった九州全域と、四国の伊予と西土佐(南九州と四国はまだ不安定だが)からの商人や旅人が、金をどんどん落としてくれるようになっている。

 京都の大使館には流民管理局が併設されているので、畿内やその周辺で起きた戦による難民も、小佐々領内に入ってくる。

 純正はその難民を司法省の管轄下にある戸籍管理部で、本籍がどこなのかの身元を確認して登録する。

 その後内務省では農民・町民・漁民などに希望により振り分ける。ここで住民票を交付して住居を与え、金銭を貸し与え、年貢の減免措置などを行うのだ。

 その結果人口増につながっている。それはつまり、国力の増強を行っている事にほかならない。

 また、以前から領内の測量を行っていたのだが、領国の拡大とその重要性が増したことで、工部省技術開発局にあった国土流通整備局が国土交通省として独立した。

 国土地理院を内部に抱えている。

 経済産業振興局も同様である。永禄十二年の四月に同時に省に昇格、国土交通大臣は遠藤千右衛門、経済産業大臣は岡甚右衛門がそのまま就任した。

 純正は、こういう内政が、外交や戦争より好きであった(元引きこもりニート)。

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