翌日、父の部屋を訪れた。
なんて切り出そう? どう説明しよう? 結局昨日はあまり寝られなかった。
(実は僕、450年後の未来から転生した未来人で……)
あほか。怪我の後遺症だから、もうだめだ! と次男の弟に期待がかかるだけだ。
(父上、8月に平戸で殺害事件が起きますので……)
懲りないねえ。同上。
(父上、今の横瀬浦は、大村民部大輔様の領地だと思うのですが……)
うーん、やっぱりこれしかないかなぁ。
ありきたりだけど、
(父上、ご迷惑をおかけしました。今後は……みたいな感じですすめるとしよう)
父上の部屋の前にいくまでになんどもロープレをした。ぶつぶつぶつぶつブツブツブツブツ。
障子の前に座り、深呼吸をしてた(どうやっても慣れないなあ)
「父上、平九郎ですが、今お時間よろしいでしょうか?」
と部屋の中に問いかける。
おう! どうした! 入れ入れ、と大きくそして骨太な返事が聞こえた。
目の前に30歳前後の精悍な顔つきと、引き締まった体つきの男が本を読んでいる。さすが海賊の隊長格だけのことはある。
俺は父の前に進み、正座をして「父上、この度は……」と話しだした。
すると間髪入れず、かたいかたいかたい。お前そんなだったか? いいから楽にしろ楽に、と父。
やばい、この時代といえど、この親子はかなりフレンドリーな感じだったんだろう。
もう一度深呼吸をして正対する。さっきの調子じゃ前置きが長くなりそうだから、用件を先にいってくれ、と父。
「はい。それではふたつあります。まずひとつ目は大村民部大輔様と、当家ならびに小佐々家の関係。そしてとなりの横瀬浦の領有の件です」
父は少しだけ驚いたような表情をみせたが、すぐに笑みをうかべた。
「うーん、大村の殿さんねぇ。たしかにちょっとバチバチしてた時期はあったけど、良好っちゃ良好だな」
ん? バチバチ?
「それから別にうちも小佐々の旦那も、大村家を寄り親にしているわけじゃないからな。小佐々一党は純粋な水軍。独立領主よ!」
がはははは、と豪快に笑う。
「高は低いが、五島灘から角力灘の帆別銭や警護料が大きい。大名とまではいかないが、収入だけでいえば、かなりのもんだ」
と答えた。
やっぱり現時点では独立領主だったんだ。じゃあ今、南蛮船をどうこう言うのは時期尚早だな。
「それから横瀬浦の事だけどな。あそこは大村でも小佐々でもねえ、うちの領地だぜ」
……え?
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