「どういう事だ?」
親父が聞いてきた。
「大村様は周りを敵に囲まれております。東の西郷は義理の兄弟で、島原の有馬様の陣営にありますが、いつ敵方になるかわからない状況です。武雄の後藤は大村様に敵対心を持っておりますし、北の諸勢力は日和見です」
親父はうん、とうなずく。
「そんな状況を打開するために、南蛮貿易は是が非でも必要で、領内の安定と周囲の脅威を排除しなければなりません。仮に横瀬以外に福田や長崎を開港したとしても、大村様は水軍をお持ちではないので、いつ襲撃を受けるかわかりません。そこで我らの出番、というわけです」
俺はゆっくりと、しかしはっきりと話し続ける。
「将来的な開港を見据えて、我らを味方につけ、海上護衛と港の防衛を担わせる。もちろん陸においても、八木原の関所を廃止したり税制を優遇するなどします。ただ先々は、関所は全廃しても問題ないと思います」
「なるほど、どちらにも得はあるが損はない、という事じゃな」
すべてを聞いた上で、飲み込んだように親父は答えた。
「はい」
「わかった。それについては小佐々の旦那と話してみよう」
「ありがとうございます」
本当はもっと話したいことはあったのだが、急いては事を仕損じる。最優先課題から片付けよう。
一礼して、部屋をでた。なぜか親父が、満足そうに笑っているように見えた。胸をはり、呼吸を整えながらゆっくり歩き自室に戻る。
ふうううううううううううーーーーーーーーーーー。疲れたー。畳の上に大の字に寝転がり、ごろごろごろごろっと転がって天井を見上げる。
親父相手でもこうなんだから、他人だったら相当な頭脳労働だぞ。これ。
有給つかって休んだのに、なんでこんなに疲れんの? 笑うしかない。
まあ、愚痴ってもしょうがない。
製造業は創意工夫が必要だから、すぐには無理か?
農業、漁業、商業? 林業……。
商業は違うか。いや農業にしたって収穫は何ヶ月後だよ。漁業も同じで、林業なんてなおさらだ。
……いや、一ヶ月あるんだ。もう、今日は寝よう。
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